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LOGISTICS NEWS

「卸」のフードバンク支援を コロナ禍とSDGsで物流増 配達がネックに

更新日 : 2021.10.01
「卸」のフードバンク支援を コロナ禍とSDGsで物流増 配達がネックに
支援先や提供元は増えるのに、運んでくれる人の数が減少している――。コロナ禍、そしてSDGs(持続可能な開発目標)への企業の取り組みが進展することで取り扱う食品量が増えているのがフードバンク。その一方で、運転免許を持つ人が肌感覚として少なくなっていることから、物流のプロのフットワークを借りたいと話している。運送経営者のなかにも、「何かお手伝いできないか」とフードバンクの門を叩く向きが現れ始めた。国内フードバンクの老舗、認定特定非営利活動法人「フードバンク関西」(神戸市東灘区)の事例を見る。
阪神電車の芦屋―深江間のマンションの1階。フードバンク関西の「事務所」兼「荷捌き場」兼「倉庫」だ。面積にして約70坪。企業などから提供された余剰の食品を引き取り、保管・仕分けし、出荷する場だ。冷凍・冷蔵庫やダンボールに入った食品、個包装姿で棚に仕分けされた食品が所狭しと並ぶ。
フードバンクは、提供された食品を母子施設や子ども食堂、障がい者施設などの「受取り団体」に配給する、いわば卸機能の役割を持つ。フードバンク関西の場合、神戸市内を中心とし、西は姫路から東は大阪市内まで、145の受け取り団体を擁する。
卸役としての物流はどのようになっているのか。フードバンク関西の中島真紀理事長(写真右)によると、法人の車やボランティア自身の自家用車を使って配達に当たれるのは30人弱。「高齢者の運転免許証返納や若者の免許人口減があり、配達が運営上のネックになっている」という。引き取り団体のなかには食品を取りに来る団体も多いが、少なくとも45か所には配達までフードバンク関西が担っている。
配達の担い手が減少する一方、昨今の諸事情によってフードバンクによる扱い食品の増加が顕著だ。
事情の一つはコロナ禍。同理事長によると、消費が縮小し、行き場のなくなった食品があふれたことや「コロナ禍緊急食支援」などのプロジェクトを実施したことによる。
同支援などのプロジェクトは昨年、コロナ禍の影響を受けた個人世帯に対し、食品パックの宅配希望者を募ったもの。従来事業とは違い、いわば卸機能から小売り機能への進出に当たるようなものだ。計3回のプロジェクトで、延べ2000世帯弱の約6600人に、21トンの食品を宅配した。
食品増加のもう一つの事情は、企業によるSDGsの取り組みの定着だ。「CSR(企業の社会的責任)と言っていた頃とは格段に反応が違う。取り組みに関して提供企業のほうから『ホームページに載せたい』」という申し出があるほど」(上野裕司副理事長=同左)という。昨年度は183の企業などから食品251トン(前年度比25%増)が寄せられた。
中島理事長は、「常時でなくても余力のあるときにトラック、倉庫などで助けてもらえれば」と、物流業界にメッセージを送る。 こうした台所事情に、一肌脱ごうとする運送事業者も現れている。フードバンク関西から車で5分程度の同区内にある「酒井陸運」の伊藤彰代表(同中央)は4月、地元紙でフードバンク関西の取り組みを見て、「何かできないか」と門を叩いた。食品の展示会後、余剰食品を大阪市内からフードバンク関西の事務所にまで10トン車でボランティア輸送したりしている。
伊藤代表は、「従業員をボランティアにというのは少し意味が違ってくる。フードバンクの趣旨を理解したオーナー経営者が集まれば、長続きする応援も可能だと思う」と話している。
◎関連リンク→ フードバンク関西
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