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コラム

令和3年度「過労死等の労災補償状況」が公表されました

令和3年度「過労死等の労災補償状況」が公表されました

更新日 : 2022.07.13
働き方改革

厚生労働省から公表される、過労死等の労災補償状況が今年も 6 月 24 日に公表されました。長時間労働などの過重労働が原因で発症した脳・心臓疾患や仕事による強いストレスが原因で発症した精神障害などについて、業務上疾病いわゆる労災として請求のあった件数や支給決定された件数などを業種や職種別にまとめたものです。

脳・心臓疾患に関する事案

 脳・心臓疾患に関する事案については、業種別では、「道路貨物運送業」で請求件数が 124 件、支給決定件数が 56 件と他の業種に比べ圧倒的に多く、職種別でも「自動車運転従事者」が最も多く、請求件数が 150件、支給決定件数が 53 件となりました。
 運送業界では、2024 年(令和 6 年)4 月に、働き方改革関連法の改正による「時間外労働を年間 960 時間までとする上限規制の施行」を控え、労働時間を削減することにより業界で起こるといわれる諸問題を含め「2024 年問題」として取り上げる機会が増えてきました。

 もともと、運送業界は、恒常的な長時間労働に起因する「脳・心臓疾患」の発症やこうした疾病を原因とする事故の多さが問題視されてきました。そのため自動車運転者の長時間労働の実態やそれに伴う健康障害や事故の多発を防ぐための業界向けの個別の指導基準として運転者の拘束時間や運転時間などの基準を定めた「改善基準告示(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)」が出されています。
 毎年、公表されているこの過労死等の労災補償状況の請求・支給件数の数値が高止まりとなっている現状からも、時間外労働の削減は、運送業界にとって必須の課題であることがわかります。

精神障害に関する事案

 「過労死等の労災補償状況」の公表では、脳・心臓疾患に関する事案の他に、精神障害に関する事案の労災補償状況も一緒に公表されています。こちらの結果でも道路貨物運送業の請求件数が 106 件、支給決定件数が 47 件と業種別で 3 番目に多い数値となります。また、職種別では、請求件数が111 件で 7 番目、決定件数が 41 件で 4 番目に多い職種となります。どうでしょうか?以外と多いことに驚かれるのではないでしょうか?

 精神障害に関する事案につきましては、長時間労働だけがその原因とまでは言えませんが、その要素としては、含まれています。また、業種別・職種別の数値ではありませんが、精神障害の具体的な出来事としては、パワーハラスメント(上司とのトラブル・同僚からの暴行又はいじめなど)を原因とする事案が多いようです。その他に悲惨な事故や災害の体験、目撃をしたことなども原因としては大きいという結果が出ています。
 パワーハラスメントについては、運送業界でも起こる労働関係トラブルですが、2022 年 4 月からは、中小企業でハラスメント防止措置対策が義務化されており、運送会社もその対応を行う必要があります。
 自動車運転者に関しては、疾患に起因する事故で、周囲の多くの人を巻き込む大きな事故に発展する可能性があり、特に、労働時間削減・ハラスメント防止対策などは、法改正への対応としても今後の取組み、対策は必須と考えられます。

厚生労働省:報道発表資料参照
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26394.html