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コラム

運輸業界に対する監督指導・送検等の状況について

運輸業界に対する監督指導・送検等の状況について

更新日 : 2022.09.02
報告資料

労働基準監督署の行う監督指導とは?

 労働基準監督署では、労働基準関係法令に基づき、労働条件や安全衛生の基準が適正に行われているかどうかを調査し、違法な長時間労働や割増賃金の不払いなどがあれば是正勧告を行い指導します。これを監督指導と言い、労働基準監督官が行います。
 監督指導は、事業者が法違反を是正することが目的です。そのため、是正を受けた事業者は、決められた是正期限までに指摘された事項を改善するための取組みを行なわなければなりません。そして、取組みにより是正が確認できれば、監督指導は終了となります。
 ところが、事業者によっては、是正勧告をうけたにもかかわらず法違反を是正せず、違法状態を放置し、改善を行わないなどの悪質な場合があります。
 実は、労働基準監督官は、「司法警察職員」として、警察官と同じように強制捜査や送検を行う権限を持っています。そのため、法違反を是正しないなどの悪質な事業者に対しては、この司法警察の権限を行使し、送検等を行います。

令和3年の監督指導状況は?

 令和3年に自動車運転者を使用する事業場で監督指導を実施した件数は、3,770件です。そのうち、3,037件がトラック事業に対するものです。
 この中で、労働基準関係法令の違反が認められたのは、3,054件(トラック2,465件)でした。これは、監督指導実施件数の81.0%(トラック81.2%)となり、大変高い違反率となります。
 違反内容としては、労働時間(45.1%)、割増賃金の支払(21.2%)、時間把握(7.5%)の順となります。
 監督指導では、改善基準告示に関する違反も是正の対象となっています。
 こちらは、全体で2,010件(トラック1,754件)の違反が認められ、違反率は、53.3%(トラック57.8%)となり、違反内容は、最大拘束時間(39.1%)、総拘束時間(29.7%)、休息期間(27.5%)の順となります。
 また、重大・悪質な労働基準関係法令違反により送検された件数は、42件です。

詳細:厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000962665.pdf
「自動車運転者を使用する事業場に対する監督指導、送検等の状況(令和3年)」

今後について

 令和5年4月(2023年4月)には、60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率の変更(5割増)や令和6年4月(2023年4月)には、自動車運転者の時間外労働の上限規制(年間960時間)などの法改正の施行が控えています。
 今後、更に、労働監督指導は強化され、違反事業者には、厳しい是正指導が行われる事が予想されます。
 事業者は、自動車運転者の労働環境の改善につとめ、法違反のない事業運営を行っていく必要があるでしょう。