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コラム

従業員に賞与を出した時の手続き

従業員に賞与を出した時の手続き

更新日 : 2023.07.07
社会保険

賞与支給制度

 毎年6月から7月にかけて従業員に夏季賞与を支給する会社は多いかと思います。
 賞与は、法令上必ずしも支給しなければならないものではありませんが、従業員のモチベーションを高める要素もあり、
会社業績や本人の勤務成績等を勘案し、支給を行う会社も多いのではないでしょうか。
 賞与を制度として支給しているのであれば、支給要件などについて就業規則等への明記も必要となります。
 それでは、社会保険における賞与の取り扱いについてはどうなるのか確認してみましょう。

社会保険における賞与の取り扱い

 社会保険(健康保険・厚生年金保険)では、賞与についても毎月の保険料と同率の保険料を納付すること
となります。
 そのため、会社は、従業員に賞与を支給した場合『被保険者賞与支払届』により、日本年金機構の管轄の事務
センターに支給金額を届出します。この届出により、標準賞与額が決定され、被保険者である従業員の受給する年金
額の計算に使用されることとなります。

 ここでいう賞与とは、「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償
として受けるもののうち、年3回以下の支給のもの」とされていて、年4回以上支給されるものについては、標準報酬月額
の対象とされるため、毎月の給与で支払う社会保険料に反映されます。

 賃金規程などで、〇〇手当などの名目で特定の月のみ支給する手当などは、名称が手当となっていても、
例えば、年2回の支給であれば、賞与として支払いの報告を行う必要があります。

 また、労働の対償とみなされない結婚祝い金などは、賞与とも通常の賃金とも、どちらの対象ともならず、
「報酬等」には含まれませんが、例えば、永年勤続表彰金など恩恵的な給付と思えるものについてはどうでしょうか?
この永年勤続表彰金に関しては、以下のような事務取り扱いの判断基準が示されました。

社会保険における賞与の取り扱い

永年勤続表彰金の取り扱い

 永年勤続表彰金については、企業により様々な形態で支給されるため、その取扱いについては、名称等で判断する
のではなく、その内容に基づき判断を行う必要があるが、少なくとも以下の要件を全て満たすような支給形態であれば、
恩恵的に支給されるものとして、原則として「報酬等」に該当しない。
 ただし、当該要件を一つでも満たさないことをもって、直ちに「報酬等」と判断するのではなく、事業所に対し、
当該永年勤続表彰金の性質について十分確認した上で、総合的に判断すること。

≪永年勤続表彰金における判断要件≫
①表彰の目的
  企業の福利厚生施策又は長期勤続の奨励策として実施するもの。なお、支給に併せてリフレッシュ休暇が付与
  されるような場合は、より福利厚生としての側面が強いと判断される。
②表彰の基準
  勤続年数のみを要件として一律に支給されるもの。
③支給の形態
  社会通念上いわゆるお祝い金の範囲を超えていないものであって、表彰の間隔が概ね5年以上のもの。

 永年勤続表彰金などは、恩恵的な手当として支給している会社も多く、賞与報告を行っていないケースも多いもの
ですが、年金機構の調査などで報酬と判断されるケースもあり、遡及されることもあるため注意が必要です。
賞与の報告漏れは、従業員の将来の年金額などにも影響しますし、社会保険料の負担は労使折半となるため、
遡及となれば、従業員本人からの徴取も必要となるため注意が必要となります。

社会保険における賞与の取り扱い

日本年金機構
「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集 」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.files/jireisyu.pdf

執筆

山下智美
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特定社会保険労務士

山下智美