軽貨物事業を展開するキャリーブルーム(山根学社長=写真左、横浜市都筑区)と物流業界向けにITサービスを提供するユアルート(玉谷風輝CEO=同右、同神奈川区)は、物流DX「Info move.」を共同開発した。まずは軽貨物事業者への利用を提案していくという。
同システムでは、ドライバーが個人で所有するスマホにアプリをインストールすると、そのドライバーが現場へ向かっているかどうかから動態管理が可能になるのが特徴。山根社長は、「事務所での出退勤を管理するシステムはあるが、自宅から現場へ向かうところまで管理できるものはこれまでなかった」と胸を張る。
プライバシーなどの面からあくまでドライバーの同意の下という形にはなるものの、「家を出るところから管理することで、現場に穴を空けるリスクを大幅に減らせる」という。「契約する軽貨物ドライバーが多くなればなるほど、管理業務は煩雑になる。それを見える化することで効率化が実現する」。
配車経験があるという玉谷CEOも、「当時を振り返ると、『誰々さんはきちんと現場に行ってるかな?』という会話をよくしていたが、まさに非効率さの現れ。一人の寝坊で荷主を失うと、何千万という損失に繋がることもある」とし、そのリスクを軽減できる同システムに自信を見せる。「ドライバー全体を一元管理できるのは便利。点呼状況も一つの画面で見ることができ、何か問題があればすぐに対応できる」。
主なターゲットである軽貨物業界について同社長は、「最近は『ギグワーク』という概念が生まれ、会社をまたいで仕事をするドライバーも増えてきた」と指摘。「複数の荷主から仕事を受ける場合も一元管理ができ、時代に沿ったサービス」であることを強調する。
現在は、動態管理ができる段階の「バージョン1」で、ここを入口とし、「Q&A方式で簡単に日報が作成でき、稼働明細や売上明細に反映」「各現場でのシフト共有」「チャット機能」などの機能を持つ「バージョン2」、さらには、ブロックチェーンやAIなどへの展開も視野に入れる。同CEOは、「ユーザーをコミュニティ化し、同システムへの意見を募ったり、物流の未来について意見交換を行うイベントの開催も検討している」という。
利用料は、軽貨物事業者は30IDまで月額1万円(税別)。一般貨物の場合は20IDまで同1万円(同)。
同社長は、「分散型管理のパイオニアとしてプロダクトを成長させていきたい。物流業界の縦割り構造を解消していく布石になれれば」と展望。玉谷CEOも、「スマホ1台で管理できるのは大幅な効率化につながる。『こういうものがあったらいいな』という現場目線で考えていけるのは、共同運営の大きな強み」と語る。
サプライチェーンの最適化で「3つの無駄」を省く
同システムを開発した背景には、「現在の過渡期を経た上で、物流業界はどうなっていくべきか」という長期スパンでのビジョンがあるという。山根社長が目指すのは、「さまざまな無駄を省いたサプライチェーンの最適化」だという。「同一エリアで同一のサービスが併走している、同業者間で扱う荷量が異なる、多重下請け構造によって管理業務が重複している――という『3つの無駄』をなくすことに主眼を置いている」。
同システムは、これらの無駄の原因となっている「物流業界特有の縦割り構造」にメスを入れる。「ITの普及や社会的な動きとして、世の中が集約型から分散型に変化しつつある」中で、縦割り構造の中でも「管理」の部分に着目。
同社長は、「荷主から依頼を受けた元請け会社が全ての荷物情報を持ち、仕事が協力会社に流れるにつれ、下請各社が自社の配送の領域内だけの情報を得て管理している。当然、最終的に顧客へ持って行くドライバーが持つ情報は希薄なものとなり、責任感などあらゆる意識も低くなる」と現状を分析。
その上で、同システムの目指す「分散型管理」について、「ドライバー自身に管理主体を置くという概念。ドライバー自らが管理に携わり、自身の稼働情報をクラウド上で管理者と共有することで、細かいところまで情報を拾うことができる」とし、「ドライバー同士での取引が可能になれば、管理する側の手間も省くことができる」と先を見据える。
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