” 過労死等” とは?
厚生労働省では、毎年6月に過労死等の労災補償状況の件数などを取り纏めた結果を公表しています。今年も6月 23 日に公表されました。
ここでいう「過労死等」とは、業務上の過重な負荷により脳心臓疾患を原因とする死亡、又は、業務による強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺死亡のことです。
令和 2 年度の脳・心臓疾患の死亡に関する請求件数は全体で 784 件、支給決定件数は 194 件ありました。業種別にみると、運輸業は請求件数が全体の約 20%(158 件)、支給決定件数は全体の約 30%(58 件)とどちらも最多です。
脳・心臓疾患の病気は加齢により発症の確率が高まる病気ですが、労災として認定されるのは、業務に起因し発症する場合です。業務に起因するかどうかは、業務による明らかな過重・負荷の度合いを認定基準として判断されます。
判断基準は?
【異常な出来事への遭遇】
発症直前から前日までに異常な出来事に遭遇したかをみます。
例えば、目の前で同僚が交通事故に遭うのを目撃するなどの精神的負荷や事故の救助活動を行うなどの身体的負荷、冷凍倉庫と猛暑の野外の行き来を繰り返す様な厳しい作業環境下にいたというような場合です。
【短期間の過重業務】
発症直前の労働時間数の状況を見ます。
発症から 1 週間前までに、継続的に深夜に及ぶ過度な長時間労働がなかったか、休日労働が確保できていたかなどです。
【長期間の過重労働】
発症前の長期間にわたり、疲労の蓄積をもたらすような過重な業務がなかったかをみます。
発症前の 1 ~ 6 ヶ月において月平均の時間外労働が 45 時間を超えて長ければ長いほど業務と発症の関係性は高いといわれています。特に1ヶ月で100 時間を超える場合、2 ~ 6 ヶ月の平均の時間外労働が 80 時間を超える場合など、いわゆる過労死ラインを超える労働があったかどうかです。
また、労働時間が長時間とまでは言えない場合であっても、その他に負荷の要因がある場合は、それも判断要素となります。
【労働時間以外の負荷要因】
・勤務形態・・・不規則な勤務、拘束時間が長い、深夜労働、交代勤務、出張が多い
・作業環境・・・温度環境、騒音、時差
・精神的緊張・・日常的に緊張を伴う作業、発症に近接した時期に精神的緊張を伴う業務があったか
厚生労働省では、「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」が開催され、認定基準の改定が検討されています。
これまでの長時間労働に加え、睡眠時間や休息期間などの不足なども認定の要素として重要視されており、ますます、労働時間の適正な管理と長時間労働を削減していく取組みは不可欠となるでしょう。
【厚生労働省 / 報道発表資料】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19299.html
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19408.html