年次有給休暇の計画的付与とは?
2019 年の 4 月から、労働基準法の改正により、法定の年次有給休暇の年間付与日数が、10 日以上の全労働者に対し、年 5 日間の年次有給休暇の取得が義務付けられました。
厚生労働省では、毎年 10 月を「年次有給休暇の取得促進期間」として、年休を取得しやすい環境づくりを企業に推進しています。
政府は、2025 年までに年休取得率を 70%とすることを目標としていますが、運送業界では、依然として、取得の促進が進んでいないのが実態です。
さて、年次有給休暇の取得を促進させる方法の一つに、「年次有給休暇の計画的付与」という制度がありますがご存じでしょうか?
「年次有給休暇の計画的付与」とは、年次有給休暇の付与日数のうち 5 日を除いた残りの日数について、労使協定を締結すれば、計画的に休暇の取得日を割り振ることが可能となる制度です。
活用法は?
企業の実態にあわせて、様々な設定方法が考えられますが、以下の 3 つの方式があります。
1. 一斉付与方式
例えば、製造業などで、操業を一斉に止めて全員を休ませることが可能な事業所などで使いやすい方式です。
2. 交代制付与方式
班やグループ単位で、交代で年次有給休暇を付与する方式です。
全員に同一日に休暇を取らせることが難しい業種などで、例えば、1 つの班で年末の所定労働日に 1 日、年始の所定労働日に 1 日を交代で付与するなどです。
3. 個人別付与方式
年次有給休暇を付与する日を個人別に決める方式です。
例えば、各従業員の誕生日や記念日などを個人別に事前に計画表を作成して付与する方式です。
導入するには?
年次有給休暇の計画的付与を導入する場合は、就業規則への規定と労使協定の締結が必要となります。本来、年次有給休暇は、労働者の請求する時季に与えることとされており、使用者が一方的に取得日を指定することはできませんが、労使協定で定めるところによって、従業員の個人的な理由による取得を 5 日確保した上で、5 日を超える部分についての計画付与が可能となります。
○労使協定に定める事項は以下のとおりです。
① 計画付与の対象者
② 対象となる年次有給休暇の日数
③ 計画的付与の具体的な方法
④ 年次有給休暇の付与日数が少ない者の取り扱い
⑤ 計画的付与日を変更する場合の手続き
導入に際しての注意点として、年休の付与がまだない従業員や少ない従業員については、特別休暇等を付与する、平均賃金の 6 割以上の休業手当を支給して休業させるなどの対応の検討が必要となります。
また、当然ながら現在、所定休日としている日を計画年休の対象日とすることはできません。あくまでも所定労働日の中で対象日を設定することが必要となります。
参考(厚生労働省:年次有給休暇取得促進特設サイト)
https://work-holiday.mhlw.go.jp/kyuuka-sokushin/jigyousya2.html
執筆
特定社会保険労務士
山下智美