副業・兼業の検討
働き方改革の促進を受け、副業・兼業に関する考え方が大きく変わってきています。
今まで、一般的な考え方として、他社へ機密情報が漏洩するリスクや長時間労働を誘引する懸念などから、副業は認めない方針とすることが多かったのではないでしょうか?
ところが、働き方改革により副業・兼業を解禁することで、企業は、新たな労働力を確保することができ、労働者は、副業・兼業により新たな技術の習得などキャリア形成を築くことができるなどの理由から、国は、積極的に副業・兼業を認める方向性へと進んできました。
そのような中、運送会社に関しては、長年、ドライバーの長時間労働が問題となっており、各社がどのようにドライバーの労働時間を削減し、労働環境を改善するのかが課題となっています。
2024年4月には、働き方関連法令の改正により自動車運転者に対する時間外労働時間の上限規制(年間960時間を上限とする。)が施行されるなど、運送会社も対応を求められており、週の所定労働日数が少ないアルバイトや高齢者を嘱託で活用するなど雇用形態も多様化してきています。
副業・兼業を認める上での最大の懸念事項は、本業の勤務時間以外に更に副業の労働時間が加算される事による労働時間の長時間化のため、これまで、運送業界で副業・兼業を容認することは難しいものと考えられてきました。けれども、雇用形態の多様化により、運送会社でも副業・兼業を認める事を検討する機会が増えてきました。
それでは、副業・兼業を認める事を前提とした場合、企業は、どんな準備を行えば良いのでしょうか?
企業側の準備
【就業規則の改定】
副業・兼業を認めるといっても、長時間労働を容認したり、同業他社に企業情報が漏洩したりすることを許すものではありません。そのため、規定では、副業・兼業を行う際には、会社への届出が必要であること、また、本業に支障が出る業務や競業となる場合、情報漏洩が懸念される場合などは、制限や禁止できることについて明記します。
~厚生労働省のモデル規定~
第○条 (副業・兼業)
1 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 会社は、労働者からの前項の業務に従事する旨の届出に基づき、当該労働者が当該業務に従事することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、これを禁止又は制限することができる。
① 労務提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合
【労働時間の把握と健康管理】
労働基準法第38条により、「労働時間は、事業場を異にする場合も通算すること」とされています。当然に、複数の事業場での労働時間が時間外に及べば、割増賃金の支払い対象にもなります。会社は、労働者の副業等の状況の把握が必要となるため、以下の事項を労働者の申告等により確認します。
1 基本的な確認事項
① 副業・兼業先の事業内容
② 副業・兼業先で労働者が従事する業務内容
③ 労働時間通算の対象となるか否かの確認
2 労働時間通算の対象となる場合に確認する事項
④ 副業・兼業先との労働契約の締結日、期間
⑤ 副業・兼業先での所定労働日、所定労働時間、始業・終業時刻
⑥ 副業・兼業先での所定外労働の有無、見込み時間数、最大時間数
⑦ 副業・兼業先における実労働時間等の報告の手続
⑧ これらの事項について確認を行う頻度
副業・兼業を認めることで、十分な休息や休日の確保ができず、長時間労働などにより労働者が健康を害することがないよう、会社は、一定の管理をすることが必要となります。
厚生労働省:「副業・兼業の促進に関するガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000962665.pdf