令和5年の地域別最低賃金額引き上げ
7月28日に、今年度の地域別最低賃金額の改定の目安が公表されました。
本年度は、物価上昇なども勘案されたため、全国平均でこれまでで最高の『41円』の引き上げが目安とされ、
これにより最低賃金額の全国平均は、現在の『時給 961円』から『時給 1,002円』となりました。
最低賃金額の全国平均が1,000円を超えるのは、初めてとなります。
最低賃金は、各都道府県を経済実績に応じて、A~Cの3つのランクに分け、ランクごとに引き上げ額の目安が設定
されます。各都道府県に適用される目安のランクは、以下のとおりです。
各都道府県の引き上げ目安と運送業への影響
今回発表されたのは、厚生労働省からの諮問に対し、中央最低賃金審議会で審議され、その結果が、地方の
最低賃金審議会に目安として示されたものです。今後、各都道府県で調査審議が行われ、10月には、
正式に決定となります。
運輸業界では、固定的賃金(基本給など)を、最低賃金をベースとして決定している企業も多く、また、倉庫作業
などを行うパートタイマー等の賃金を最低賃金ベースとしていることも多いのが実態です。
今回、引き上げ率で昨年の3.3%を上回る4.4%の上昇は、今年4月からの60時間超の時間外労働の
割増賃金率の引き上げによる人件費の高騰や、2024年4月の年間960時間の時間外労働上限規制に伴う
労働時間削減により、売り上げの減少が懸念されるなど厳しい局面を迎える運輸業界にとって、更に拍車をかける
展開となりそうです。
最低賃金の計算方法
最低賃金の計算方法は、以下のとおりです。
1. 基本給などの固定的賃金を自給に換算する。
(日給は、1日の所定労働時間、月給は、1箇月の所定労働時間で除した金額)
2. 歩合給などの業績給は、1箇月の総労働時間(時間外・休日労働時間も含む)で除して時給換算する。
3. 1と2の時給換算額の合計金額を地域別最低賃金額と比較して、上回っているかを確認します。
※時給換算する際に参入できない手当は、以下になります。
・臨時に支払われる手当(結婚手当など…)
・1箇月を超える期間ごとに支払われる手当(賞与など)
・割増賃金(時間外、休日、深夜)
・精皆勤手当、通勤手当、家族手当
地域別最低賃金の正式な金額の発表は、各都道府県により10月を目途に行われます。
それまでに、自社の最低賃金額を確認しておきましょう。最低賃金の引上げに伴う賃金アップが避けられない場合は、
そのほかの要件もありますが、自社の要件に合致すれば、助成金の申請なども可能な場合がありますので、
あらかじめ確認しておきましょう。
厚生労働省
最低賃金引き上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援事業
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/index.html
執筆
特定社会保険労務士
山下智美