近年、さまざまな「ハラスメント」が問題視されるなか、運送会社の従業員が「セクシャルハラスメント」を行い、加害者になるケースも。
「ドライバーが取引先の女性社員にセクハラをして出入り禁止になった」と打ち明けるのは愛知県の運送会社社長。同社のドライバーが取引先の女性社員に卑猥な言葉を投げかけたり、無断で連絡先を調べ、「ごはんに行こう」などとやり取りをしたという。女性社員は会社に報告。発覚後、ドライバーは自主退職した。
同社長はセクハラ行為を非難し、「このドライバーは自分が好かれていると勘違いしたのだろう」と語る。
一方、愛知県で営業職で勤める女性は、納品に来るドライバーから執拗な連絡を受け、気持ち悪く感じたという。
「『仕事でなく、休日に会いたい』と何度か誘いを受けた。断っていたが、最終的に『デートをしてくれたら、商品を購入する』と言われた。馬鹿にされていると感じたし、傷ついた」と訴えた。
愛知労働局によると県内で令和3年度のセクハラ被害の相談件数は455件。同局雇用環境・均等部指導課の矢島信子課長補佐は、男女雇用機会均等法ではセクハラについて事業主に防止措置を講じることを義務付けていると話す。例えば、ハラスメントの内容や原因、事案が発生した場合の加害者への対処方針や懲戒規定などを就業規則や社内報、パンフレットで定期的に労働者へアナウンスする等があげられる。また、社内に相談窓口を設置することも求められる。
社内でセクハラ被害が発生した場合は、事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害者への配慮と加害者に対しての規則に則った措置を行い、再発防止措置の実施が必要。この際、プライバシーの保護も求められる。
同氏は「セクハラ被害もケースバイケースで会社によって対応が異なる。だが、的確にルールが定めてあれば迅速に対応できる」と話し、マニュアルが極めて重要と指摘。さらに、「ハラスメントは尊厳や人格を不当に傷つけ、職場の秩序が乱れるもの。もし事案が起こった場合、会社として真摯に当事者に対応すれば、被害者の心も回復していくし、モチベーションがあがるのでは」と考えを示した。