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コラム

ドライバーの健康管理の重要性とは?法的義務や推進の取り組みについて解説

ドライバーの健康管理の重要性とは?法的義務や推進の取り組みについて解説

更新日 : 2025.11.21
運送業

日々の暮らしやビジネスに欠かせない物流を支えているのは、現場でハンドルを握るドライバーです。しかし昨今、多くの運送会社でドライバーの健康管理が十分に行き届いていないことが課題となっています。

ドライバーの健康問題は、個人の問題にとどまりません。運送会社、ひいては社会を脅かす重大なリスクとなります。

この記事では、ドライバーの健康管理がなぜ重要なのかをはじめ、法的な義務や運送会社が取り組むべき実践的な対策を解説します。日々の現場管理をより安全で持続的なものにするためのヒントとして参考にしてください。

目次

ドライバーの健康管理の重要性

ドライバーの健康管理を適切に行うためには、運行管理者自身が重要性を理解していることが前提です。理解が不足していると、日々の点呼や健康チェック、制度の運用も形だけになりやすく、効果的な取り組みは進みません。

まずは、ドライバーの健康管理の重要性について、以下の2点に分けて解説します。

・体調不良は事故や重大な労災リスクにつながる
・健康管理は法で定められた企業の義務である

体調不良は事故や重大な労災リスクにつながる

ドライバーが体調不良のまま運行を続けると、注意力や判断力が低下し、交通事故や労災の発生リスクが高まります。小さな判断ミスが大事故につながることもあり、ほかのドライバーや歩行者にも被害が及ぶおそれがあります。

万一の事故は、ドライバーの安全を脅かすだけでなく、企業の信用失墜や取引停止など、経営面にも深刻な影響を及ぼします。社会的責任の大きい運送業において、健康管理の不備は組織全体のリスクといえます。

運送業では、長時間労働や不規則な勤務が続きやすく、疲労や体調不良を招きやすい環境にあります。こうした特性を踏まえ、日常的な健康チェックや休息の確保など、ドライバーの健康管理体制を整えることが不可欠です。

なお、ドライバーの拘束時間について詳しくは、以下の記事を参考にしてください。

※記事は近日公開予定です

健康管理は法で定められた企業の義務である

ドライバーの健康管理は、法で定められた企業の義務です。たとえば労働安全衛生法第六十六条では、ドライバーを含む従業員に対して健康診断を実施する義務が事業者に課されています。こうした義務を怠ると、是正勧告や罰則の対象となるほか、労災発生時には企業責任が問われます。

また、事業者に課される義務は、健康診断の実施だけではありません。診断結果の記録・保管に加え、必要に応じた医師の意見聴取など、対応すべき項目は多岐にわたります。これらを運行管理者が正確に把握し、適切に管理できていなければ、事業者としての責任を問われるおそれがあります。

運行管理者や運送会社は、法令を遵守したうえで、ドライバーの健康管理を適切に行う責任があります。そのためには、関連法規を正しく理解し、定期的な健康診断や管理体制を整えることが重要です。こうした取り組みが、安全な運行の維持と労災・事故のリスク回避につながります。

運送会社に求められるドライバーの健康管理体制

ドライバーの健康を守るため、運送会社は適切な健康管理体制を整えなければなりません。ここでは、運送会社に求められる具体的な健康管理体制について解説します。

大まかな管理項目は、下表のとおりです。

区分管理項目
1.日常管理・日々の健康状態を把握し乗務可否を判断する
2.定期健診・定期的に健康診断を実施する
・診断結果を記録・保管する
3.診断後の対応・必要に応じて医師の意見を聴取する
・診断結果に応じた措置を講じる
・継続的に保健指導を行うように努める

それぞれについて、順番に見ていきましょう。

1.日常管理

日々の運行における健康状態の管理は、健康管理の基本です。ドライバーの体調を日々チェックし、健康問題の兆候を見逃さないよう注意することが求められます。

日々の健康状態を把握し乗務可否を判断する

運行管理者は、点呼を通じてドライバーの体調や疲労の状況を把握し、その結果に応じて乗務の可否を判断する責任があります。日々の健康状態を継続的に確認することが、安全運行の基本です。

体調不良や異常が見られた場合は、無理に乗務させず、代替ドライバーの手配やスケジュールの再調整など、状況に応じた措置を講じる必要があります。

健康上の問題を抱えたまま乗務を許可すれば、管理者自身の責任が問われる可能性もあります。点呼時には、顔色・声の調子・受け答えなどを丁寧に観察し、異変を早期に把握することが重要です。

2.定期健診(法令に基づく義務)

日々の管理に加え、法律で定められた定期的な健康診断の実施も不可欠です。これは法令に基づく事業者の義務であり、確実な実行が求められます。

定期的に健康診断を実施する

労働安全衛生規則第四十四条によると、事業者は従業員に対して、年に1回以上の頻度で健康診断を実施する義務があります。運送会社も例外ではなく、ドライバーに対して定期的に健康診断を実施しなければなりません。

健康診断では、既往歴や業務歴の調査、自覚症状や他覚症状の検査、身長・体重・視力・聴力の測定、血圧や血液検査、心電図検査などを行います。医師が不要と認める項目は省略可能ですが、基本的には幅広い健康状態を確認する内容です。

健康診断の費用は事業者が全額負担し、ドライバーが確実に受診できる環境を整える必要があります。定期健診を通して、健康リスクの早期発見と安全運行の確保につなげることが求められます。

診断結果を記録・保管する

労働安全衛生規則第五十一条では、健康診断の結果は「健康診断個人票」として記録・作成し、5年間にわたり保管する義務があります。運送会社は各ドライバーの健康診断結果を整理し、適切に保管しなければなりません。

健康診断個人票の保管は、緊急時や労働災害発生時に健康状態を確認するために必要です。必要なときにすぐ参照できるよう、紙や電子データでの管理体制を整えておくことが求められます。

3.健診後の対応

健康診断は、実施して終わりではありません。診断結果に基づき、必要な事後措置を講じ、ドライバーの継続的な健康維持につなげることが大切です。

必要に応じて医師の意見を聴取する

労働安全衛生法第六十六条の四では、従業員の健康診断で「異常の所見」があった場合、事業者は医師(または歯科医師)の意見を聴く義務があります。

運送会社も、異常の所見があったドライバーに対しては医師の意見を聞き、健康の維持に必要な措置を確認しなければなりません。

事業者自身の判断だけで「問題なし」と結論づけることは認められていません。医師の意見を踏まえ、適切な対応を検討することが求められます。

診断結果に応じた措置を講じる

労働安全衛生法第六十六条の五では、医師の意見を踏まえ、事業者は従業員の健康保持のために必要な措置を講じる義務があります。

運送会社も、就業場所の変更や作業内容の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数減少など、ドライバーの実情に応じた配慮が求められます。場合によっては、作業環境の改善や設備の設置・整備、衛生委員会や安全衛生委員会への報告など、個人にとどまらない総合的な措置も必要です。

診断結果や医師の意見を無視してドライバーを通常業務に就かせることは危険であり、必ず適切な対応を講じなければなりません。

継続的に保健指導を行うよう努める

労働安全衛生法第六十六条の七では、健康診断で特に健康維持が必要とされた従業員に対して、事業者は医師または保健師による保健指導を行うよう努める義務があります。

診断の結果、特に健康の保持が必要と認められるドライバーには、生活習慣や運動、食事などの改善指導を通した健康維持の支援が求められます。

これは努力義務にあたりますが、定期的な保健指導を続けることは、ドライバーの健康リスクを軽減し、安全運行につなげるうえで重要です。あわせて、ドライバー自身も健康診断や保健指導の内容に従い、日常的な健康管理に努めることが重要です。

ドライバーの健康管理における課題

ドライバーの健康管理は、運送会社や運行管理者にとっての義務です。しかし、多くの運送会社の現場では、さまざまな理由から徹底が難しいのが実情でしょう。

ここでは、ドライバーの健康管理における3つの課題について解説します。

運行管理者の業務負荷が高まっている

運行管理者に求められる業務は、ドライバーの健康管理だけではありません。荷主との調整や効率性を考慮した運行計画の策定など、業務範囲は多岐にわたります。運行管理者の業務負荷が高まっており、健康管理に手が回らない現場も多いでしょう。

結果として、点呼時の健康チェックが形式的な確認にとどまるなど、ドライバーの疲労や体調不良の兆候を見逃すリスクが高まっています。運行管理者の負担を軽減しつつ、ドライバーの健康管理を確実に実施できる仕組みづくりが大きな課題です。

離れたドライバーとの情報共有が難しい

ドライバーの健康管理を確実に行うためには、運行管理者との密な情報共有が不可欠です。しかし、遠方で業務にあたるドライバーとの連携が難しい課題があります。

ドライバーが必ずしも営業所に出勤するとは限りません。直行直帰のドライバーや、遠隔地の車庫から業務を開始するドライバーもいます。このような場合、対面での点呼が難しく、電話点呼に頼らざるを得ないでしょう。

電話では声の調子は分かっても、顔色や表情といった視覚的な情報を把握できません。そのため、運行管理者がドライバーの体調を正確に判断することは難しく、経験や勘に依存した対応になりがちです。

今後は、遠隔地のドライバーともリアルタイムに情報を共有し、客観的なデータに基づいて健康状態を確認できる仕組みづくりが求められます。

人材不足で健康管理が後回しになりやすい

運送業ではドライバー不足が長期化し、限られた人員で業務を回す状況が続いています。健康管理に時間や工数がかかると運行業務に支障が出やすく、結果的にドライバー1人あたりの負担が増大して健康管理が後回しになりがちです。

また、運行管理者も人材不足のなかで複数の業務を兼任しており、ドライバーの健康状態まで十分に把握するのは難しいでしょう。そのため、体調不良のサインを見逃したり、対応が後手に回ったりするケースも見受けられます。

今後は、採用や教育コストが増大するなかで、限られた人材をどう確保・育成していくかが大きな課題となります。こうした状況を踏まえ、業務の効率化や体制づくりを進めることが求められます。

なお、トラックドライバーの人手不足について詳しくは、以下の記事を参考にしてください。

※記事は近日公開予定です

ドライバーの健康管理における課題の解決方法

人手不足や業務負荷の増加により、ドライバーの健康管理が後回しになっている現場も少なくありません。安全な運行を維持するためには、現場任せにせず、組織全体で管理体制を強化することが求められます。

ここでは、ドライバーの健康管理における課題の解決方法を2つ紹介します。

産業医の配置による専門的な健康管理

産業医を配置することで、医学的な知見に基づく専門的な健康管理が可能になります。嘱託や外部委託の形でも対応できるため、限られた人員体制でも取り入れやすい方法です。

労働安全衛生法では、常時50人以上の従業員がいる事業所に産業医の選任が義務付けられています。小規模な運送会社であっても、外部の産業医と連携し、定期的な健康相談やストレスチェックを実施することで、体調変化の早期発見や重症化の防止につながります。

運行管理者のリソース不足の解消・業務効率化

運行管理者の業務は、点呼・配車・労務管理など多岐にわたり、健康管理まで手が回らない現場も少なくありません。リソース不足を補うためには、ITツールを活用して業務を効率化する取り組みが不可欠です。

たとえば「点呼システム」を導入することで、業務負荷の高まりやすい点呼を自動化・効率化できます。ITツールを利用することで、高精度な点呼管理ができ、運行管理者の手助けとなるでしょう。

こうしたシステムの導入は、運行管理者の負担を軽減するだけでなく、ドライバーの健康と安全を守るうえでも効果的です。

なお、点呼を効率化したい運行管理者には、システムギア株式会社の「点呼システム」がおすすめです。運送業における安全管理の要である点呼業務を、AIロボットやITの力でサポートします。主な特長は以下のとおりです。

・ロボットによる自動点呼
・点呼記録簿の自動作成
・顔写真をエビデンスとして保存
・点呼結果のリアルタイム通知

こうした機能により、運行管理者の業務負担を大幅に軽減しつつ、ドライバーの健康状態をより正確に把握できます。


また、配車業務にも課題を抱える現場では、「一番星 クラウド配車」の活用が有効です。ドラッグ&ドロップで誰でも直感的に操作でき、スケジュールや点呼・休憩時間を可視化できるため、無理のない運行計画の立案にもつながります。

これらのシステムを組み合わせることで、点呼と配車の両面から業務を効率化し、運行管理者の負担を軽減しながら、ドライバーの健康と安全を守る体制を構築できます。


まとめ

ドライバーの健康管理は、安全運行と労働環境の両面を支える重要な取り組みです。

人材不足や業務負荷の高まりを踏まえると、運行管理者がすべてを手作業で担うのは現実的ではありません。健康管理を精度高く行うためには、ITツールを活用した効率的な仕組みづくりが欠かせません。

たとえば、「点呼システム」を導入すれば、自動点呼や、記録簿の作成を通して、ドライバーの体調変化を的確に把握できます。点呼の精度が上がることで、事故や労災のリスク軽減にもつながります。

さらに、健康管理を支える基盤として、「一番星 クラウド配車」の活用も効果的です。受注から配車、請求までを一元管理でき、点呼や休憩時間も可視化できるため、無理のない運行計画を立てやすくなります。

両システムを組み合わせて活用することで、点呼と配車の両面から健康と安全を守りつつ、業務効率化を実現できます。ドライバーの健康管理を強化し、現場全体の効率化を進めたい方は、ぜひ導入を検討してください。