運送業の日常業務において、運行管理者と配車係はそれぞれ重要な役割を担っています。しかし、「具体的に何が違うのか分からない」「同じ担当者が兼任しても問題ないのか」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
運行管理者と配車係は密接に関わる職種ですが、役割や責任範囲、法的な位置付けは大きく異なります。両者の違いを正しく理解しないまま業務を進めると、安全管理の不備や業務負担の偏りにつながりかねません。
この記事では、運行管理者と配車係の違いを仕事内容や制度面から分かりやすく解説します。併せて、兼任する際のリスクや、運行体制を効率化するポイントも紹介しますので、運送業の経営者や運行管理者の方はぜひ参考にしてください。
目次
運行管理者と配車係の基本的な違い
運行管理者と配車係は、担う役割が大きく異なります。端的にいえば、運行管理者は「安全と法令」を守る役割、配車係は「利益と効率」を作る役割です。
まずは、それぞれの基本的な違いを整理しましょう。
運行管理者は「安全運行と法令遵守」の責任者
運行管理者とは、ドライバーが安全かつ適切に業務を行えるよう管理する責任者です。貨物自動車運送事業法にもとづき、営業所への選任が義務付けられています。運送会社における安全管理と法令遵守の中心的な存在といえるでしょう。
出典:貨物自動車運送事業法 第十六条(運行管理者)
運行管理者がいないと、過労や健康不良による重大な事故や、労働時間の上限超過といったコンプライアンス違反を招く事態も否定できません。運行管理者は、こうした問題を防ぎ、企業の社会的信用とドライバーの命を守る重要な役割を担っています。
配車係は「荷主対応と配車調整」の担当者
配車係とは、荷主から受けた配送依頼に対して、車両やドライバーを割り当てる「配車業務」の担当者です。限られた車両と人員を最大限に活かし、配送依頼を確実に完遂させます。運送会社の利益と効率を支える、現場の司令塔ともいえる存在です。
配車係がいないと、車両やドライバーの配置に無駄が生じ、空車走行や待機時間の増加を招きます。配送遅延や受注機会の損失も発生しやすくなり、運送会社の収益低下にもつながりかねません。配車係は、運送業務を円滑に進め、会社の利益を最大化するために欠かせない存在といえるでしょう。
運行管理者と配車係の仕事内容と責任範囲の違い
ドライバーや車両に関わる運行管理者と配車係ですが、日々の仕事内容や抱える責任範囲には明確な違いがあります。それぞれの違いについて見ていきましょう。
主な仕事内容
配車係は主に配車業務を担当し、運行管理者は安全や法令に関わる管理業務を担当します。
| 運行管理者 | 配車係 |
|---|
主な業務
・乗務前後の点呼(状態確認)
・ドライバーの安全指導
・改善基準告示の遵守状況チェック
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主な業務
・配車計画の作成
・荷主との調整
・ドライバーへの運行指示
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このように、運行管理者が「法令を遵守し、過労運転を防止してドライバーの安全を守る」のに対し、配車係は「状況に応じて、安全かつ効率的な運行計画を組み立てて的確に指示を出す」という異なる役割を担っています。
責任範囲
運行管理者は法令上の重い責任を負うのに対し、配車係は主に社内業務上の責任を負います。
| 運行管理者 | 配車係 |
|---|
法令上の責任
・点呼の未実施や過労運転の放置などで管理責任を問われる
・会社の行政処分だけでなく、個人が責任追及されるケースもある
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社内業務上の責任
・法的なポストではないため、義務違反としての処分はない
・ただし、基準を超える無理な指示で事故を招けば、社内処分や個人の法的責任を問われる
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万が一のトラブルの際、法令違反による行政処分の対象となる運行管理者に対し、配車係は会社組織の中での実務責任を負うという違いがあります。
ただし、どちらの立場であっても、現場への無理な指示が大きな事故につながれば、個人としての法的責任は免れません。互いの役割を正しく理解し、法令を遵守しながら日々の安全な運行体制を構築することが求められます。
運行管理者と配車係の制度上の違い
運行管理者と配車係は、制度面においても大きな違いがあります。とくに「法的な位置付け」と「必要な資格」は、人員配置を考えるうえで重要なポイントです。それぞれについて見ていきましょう。
法的な位置付け
運行管理者は法律で定められたポストであり、配車係は運送会社が任意で置く実務上のポストです。
国土交通大臣の許可を受けた一般貨物自動車運送事業者は、営業所ごとに運行管理者を選任することが義務付けられています。
また、貨物自動車運送事業輸送安全規則では、営業所ごとに管理する事業用自動車の台数に応じて、必要な運行管理者の人数が定められています。そのため、運送事業の運営において、必要な運行管理者を置かない状態は認められません。
出典:貨物自動車運送事業輸送安全規則 第十八条(運行管理者等の選任)
一方、配車係は法律で設置が義務付けられているわけではなく、運送会社が必要に応じて配置するものです。大規模な運送会社では、専任の配車係を置くケースが多いものの、中小規模では運行管理者が兼任するケースも珍しくありません。
必要な資格
運行管理者には資格が必須ですが、配車係に必須の資格はありません。
運行管理者として選任されるためには、国家資格の証明書である「運行管理者資格者証」の取得が必要です。運行管理者試験の合格などにより、その交付を受けなければなりません。また、選任後も2年に1回、運行管理者講習を受ける必要があります。
出典:貨物自動車運送事業法 第十七条(運行管理者資格者証)
一方、配車係には法律で定められた資格要件がありません。実務経験がない人を急に担当へ配属したとしても、法律違反には当たらない扱いとなっています。ただし、実際には配送ルートの知識や関係者との調整能力など、多彩な知識・スキルが要求されます。
運行管理者と配車係は兼任できる?
運行管理者と配車係の兼任は可能です。とくに中小規模の運送会社では、人員やコストの都合から兼任体制をとるケースが一般的です。1人の担当者が両方の業務を担うこと自体に、法的な問題はありません。
ただし、実際に現場で兼任するうえでは十分な注意が必要です。配車業務では、売上や配送効率を意識した判断が求められます。一方で運行管理の場面では、安全運行や法令遵守を最優先に考えなければなりません。
「利益と安全の両立」が求められる兼任者は、難しい舵取りを迫られる役回りです。個人のやり繰りに頼る体制は法令違反を招きやすいため、自社の現状を踏まえて、後述する4つのリスクに気をつける必要があります。
運行管理と配車業務の連携不足・属人化が招く4つのリスク
運行管理と配車業務は、本来であれば密接に連携しながら進めるべき業務です。しかし、特定の担当者への依存や情報共有の不足が続くと、安全面や経営面に悪影響が生じます。とくに両方の役回りを兼任している場合は注意が必要です。
ここでは、連携不足や業務の属人化によって発生しやすい4つのリスクを解説します。
・安全管理業務の形骸化
・配送トラブル・機会損失
・兼任者の休職・離職
・業務効率・生産性の低下
安全管理業務の形骸化
運行管理者が配車係を兼任している場合、点呼や労働時間の確認といった安全管理の業務が形骸化してしまう恐れがあります。結果として、過労運転などの重大なコンプライアンス違反を招きかねません。
たとえば、急な配送依頼に対応したいものの、ドライバーの拘束時間が上限を超えてしまう状況が考えられます。この場合、運行管理者としてはドライバーの時間超過を避けなければなりません。しかし、配車係としての立場を優先するあまり、無理なスケジュールを組んでしまいがちです。
とくに荷主対応や急な配車変更が重なると、本来実施すべき安全確認がおろそかになりやすいでしょう。兼任体制や繁忙期においては、配車業務を効率的に回しつつ安全管理業務も徹底しなければならないのが大きな課題です。
配送トラブル・機会損失
運行管理と配車業務の情報が分断されていると、実態に合わない配車計画を組む要因になります。現場の正確な状況が把握できず、配車手配の精度が大きく低下するためです。結果として、配送トラブルや機会損失を引き起こしてしまいます。
たとえば、ドライバーの体調不良や車両の故障情報が配車計画へ反映されないケースを考えましょう。この場合、直前での運行変更を余儀なくされ、最悪の場合は納品遅延や配送ミスにつながる恐れもあります。
また、車両や人員の空き状況を正確に把握できていないと、本来受けられるはずの案件を逃してしまいます。情報共有の不足は、配送品質の低下や売上機会の逸失を招く原因にもなります。
兼任者の休職・離職
1人の担当者が運行管理者と配車係を兼任すると、業務負担と精神的なプレッシャーが大きくのしかかります。結果として、兼任者の休職・離職につながり、業務が回らなくなる恐れがあります。
配車業務では利益や納期への責任を負う一方、運行管理では安全運行と法令遵守を徹底しなければなりません。判断を誤れば事故やクレームにつながるため、常に高い緊張感をともないます。
こうした過酷な環境が続けば、慢性的な疲労によって休職や離職へと追い込まれかねません。また、特定の人物に依存している体制では、その担当者が不在になった途端に現場が混乱に陥ってしまいます。
業務効率・生産性の低下
配車業務と運行管理業務を別々の帳票やExcelで管理している運送会社も少なくありません。しかし、情報が分散している環境では、業務効率や生産性が低下してしまいます。確認や入力の手間が増えるだけでなく、情報の更新漏れや入力ミスも発生しやすくなるためです。
たとえば、配車表に入力した内容を勤怠管理表へ転記するなどの二重入力は非効率的です。複数の帳票を参照しながら作業する必要があり、転記ミスや確認漏れも起こりやすくなります。また、急な配車変更が発生した際には、関係者への情報共有に時間がかかるのも難点です。
こうした課題を解消するためには、運行管理と配車業務を一元管理できる「運行管理システム」の導入が有効です。運行管理システムについて詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
「運行管理システムとは?機能やメリット、選ぶ際の比較ポイントを解説」
運行管理と配車業務の両立には「"一番星" 運送業システム Ver.8」がおすすめ
運行管理と配車業務を無理なく両立させるためには、担当者の負担軽減と円滑な情報共有が欠かせません。そのための具体的な解決策として、「"一番星" 運送業システム Ver.8」の導入をおすすめします。
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まとめ
運行管理者と配車係は、どちらも運送会社の業務を支える重要な役割を担います。しかし、その役割や背負う責任には明確な違いがあります。
両者の兼任は可能です。しかし、現場で運用する際は十分な注意が必要です。業務負担が1人に集中すると、安全管理の形骸化や休職、配送トラブルなどのリスクが高まります。利益と安全のバランスを保ち、両者の情報を適切に連携させる体制作りが求められるでしょう。
担当者の負担を減らして両立を目指す場合は、運行管理システムによるデータの一元管理が有効な解決策です。「"一番星" 運送業システム Ver.8」を活用し、業務効率化とコンプライアンス強化の両立を目指してみてはいかがでしょうか。