物流を支えるトラック運転手が安全運行を実現するうえでは、十分な睡眠が欠かせません。しかし、長時間労働や不規則な勤務、長距離運行など、トラック運転手には睡眠時間を確保しにくい特有の事情があります。
睡眠不足による集中力の低下は、居眠り運転をはじめとする重大事故の引き金となる可能性があります。「ドライバーの睡眠不足を防ぐためにはどのような対策を打つべきか」と頭を悩ませる運行管理者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、トラック運転手の睡眠不足について、実態から主な原因、重大なリスク、具体的な対策まで解説します。安全運行と労働環境の改善を目指す経営者や運行管理者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
トラック運転手における睡眠不足(寝不足)の実態
トラックの運行業務において、睡眠不足は多くのドライバーが直面している問題です。
国土交通省の資料によると、運転中に眠気によって危険を感じた経験があるドライバーは約65%にものぼります。また、眠気によって危険を感じたドライバーのうち、約68%が実際に居眠り運転を経験していました。
出典:国土交通省「トラック輸送の過労運転防止対策マニュアル」
居眠り運転の原因として、最も多く挙げられたのが「睡眠不足」です。多くのドライバーが、十分な睡眠を取れずにハンドルを握っている現状が浮き彫りとなりました。
このように、トラック運転手の睡眠不足は本人の眠気にとどまらず、事故防止の観点からも事業者が対策すべき課題といえます。
トラック運転手が睡眠不足になる主な原因
トラック運転手の睡眠不足には、運送業特有の働き方や労働環境が深く関わっています。ここでは、ドライバーが睡眠不足に陥りやすい3つの主な原因を見ていきましょう。
長時間労働で睡眠時間を確保しにくい
トラック運転手は運転だけでなく、荷待ちや荷役などの付帯業務も担うため拘束時間が長くなりがちです。特に荷主都合の待機や手積み・手降ろしが重なると、勤務終了から次の始業までの休息期間が削られ、十分な睡眠時間の確保が難しくなります。
また、帰宅後には食事や入浴、家事などの生活時間も必要です。勤務間の時間が限られている場合、生活に必要な時間を差し引くと、睡眠に充てられる時間がさらに短くなるでしょう。
こうした長時間の拘束が常態化すれば、慢性的な睡眠不足から抜け出せなくなります。ドライバーの睡眠時間を確保するためには、運行時間だけでなく荷待ちや荷役を含めた拘束時間全体を見直すことが大切です。
不規則なシフトや夜間運行で体内リズムが乱れやすい
トラック運送では、早朝出庫や夜間運行など、一般的な生活時間とは異なる勤務が発生するケースも少なくありません。勤務時間が日によって大きく変動すると体内リズムが狂ってしまい、決められた時間内に深く眠ることは難しくなります。
たとえば、普段は夜に眠っているドライバーが夜勤明けの午前中に休息期間を与えられても、すぐには寝付けない場合があります。休息期間は確保できていても、体内リズムとズレが生じることで入眠が困難になり、睡眠の質が落ちてしまうのです。
こうした不規則な生活や睡眠不足の継続は、高血圧や糖尿病といった生活習慣病の発症リスクを高める要因としても知られています。ドライバーの体調を守るためには、極端な昼夜逆転シフトを減らし、可能な限り一定のリズムで休息を取れる運行計画を組む工夫が欠かせません。
車中泊などで睡眠環境を整えにくい
長距離運行では、運行先でトラックの車内にあるベッドスペースなどを使って、仮眠や睡眠を取る場面が多くなります。しかし、車内は自宅の寝室とは異なり、身体を十分に休めるための環境を整えにくいのが難点です。
車内のベッドスペースは狭いうえ、近隣車両のエンジン音や走行振動、パーキングエリアの照明といった外部からの刺激にさらされます。また、アイドリング制限にともなう空調の制約や季節特有の外気温の変化も睡眠に影響するでしょう。
このように睡眠環境が整いにくい状況では、横になっている時間を確保しても、十分に休めない場合があります。運行管理者は、ドライバーが休憩・仮眠できる場所を把握し、運行計画に組み込むなど、睡眠を取りやすい環境を整えましょう。
トラック運転手の睡眠不足がもたらすリスク
トラック運転手の睡眠不足は本人のみならず、運送会社や社会にとっても大きなリスクとなります。ここでは、トラック運転手の睡眠不足がもたらす主な3つのリスクについて解説します。
居眠り運転やヒヤリハットにつながる
睡眠不足になると、日中の眠気が強くなり、集中力や判断力も低下しやすくなります。運転中に強い眠気に襲われれば、居眠り運転やブレーキ・ハンドル操作の遅れを招きかねません。
国土交通省の資料によると、睡眠時間が5時間未満のドライバーは、5時間以上のドライバーと比べて、ヒヤリハットの体験者が2.3倍となっています。また、大型トラックでは追突事故が多く、居眠り運転による一瞬の判断遅れが重大事故につながることもあります。
出典:国土交通省「トラック輸送の過労運転防止対策マニュアル」
こうした事故を防ぐためには、ドライバー個人に眠気への対処を求めるだけでなく、十分な休息を確保できる運行体制を整えることが大切です。
運転手の健康被害や離職を招く
睡眠不足が慢性化すると、日中の眠気や意欲低下など心身へ悪影響を及ぼします。生活習慣病などの健康リスクも高まり、トラック運転手の生活や業務の継続が困難になるでしょう。
体調不良による休職や離職が増えれば、運送会社にとっても深刻な問題です。新たな人材確保や日々の運行体制の維持が難しくなり、事業の継続に支障をきたす恐れがあります。
トラック運転手が長く働ける環境を整えるためには、睡眠不足を個人の問題として片付けてはいけません。会社全体で労働環境を見直し、改善していくことが大切です。
事業者の安全管理上の問題になる
睡眠不足は、トラック運転手本人だけの問題ではありません。運送事業者には、ドライバーが安全に乗務できる状態かを確認し、必要な対応を取ることが求められます。
2018年の「貨物自動車運送事業輸送安全規則」の改正では、トラック運転手を乗務させてはならない事由に「睡眠不足」が追加されました。乗務前の点呼においても、睡眠不足によって安全な運転ができない恐れがないかを確認しなければなりません。
出典:国土交通省「睡眠不足に起因する事故の防止対策を強化します!!」
睡眠不足を把握していながら乗務させたり、規定の確認を怠ったりすると、安全管理義務の違反に問われます。監査時に厳しく指導され、行政処分の対象となる恐れもあるため注意が必要です。
改善基準告示に沿った適正な労務管理とあわせて、日々の点呼でトラック運転手の疲労状態を的確に把握する体制を整えましょう。
トラック運転手の睡眠不足を防ぐための対策
トラック運転手の睡眠不足を防ぐためには、本人の生活習慣だけでなく、運送会社の仕組みも見直しが必要です。ここでは、運行管理者が取り組みやすい4つの対策を紹介します。
余裕のある運行計画で確実な休息期間を確保する
睡眠不足を防ぐためには、まずは十分な休息期間を確保できる運行計画を立てることが大切です。
改善基準告示では、勤務終了後の休息期間は「継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らない」と定められています。最低限の基準である9時間を満たすだけでなく、余裕のある休息を確保する姿勢が求められるのです。
出典:厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示」
また、荷主都合による待機や厳しい納品スケジュールは、予定していた休息時間を削る原因となります。荷待ち時間の削減や納品スケジュールの調整について荷主と協議し、無理のない計画を組むことも重要です。
休憩・仮眠できる環境を整えて睡眠の質を高める
十分な休息時間を確保していても、落ち着いて眠れる環境がなければ疲労は抜けません。睡眠による休養を十分に得られない事態を防ぐため、車外の施設も積極的に活用しましょう。
トラックステーションやパーキングエリアなど、トラック運転手が仮眠できる場所をあらかじめ把握しておくことが大切です。運行計画を立てる段階で、立ち寄りやすい休憩スポットをルートに組み込んでおくとよいでしょう。
どうしても車中泊が必要な場合には、遮光カーテンや専用マットなどを導入し、少しでも睡眠を取りやすい環境を整える工夫も有効です。
点呼時のヒアリングや日常的な健康管理を徹底する
睡眠不足による事故を防ぐためには、事前の確認プロセスも欠かせません。乗務前点呼では、睡眠不足による運転への影響がないかをヒアリングしましょう。強い眠気や疲労が確認された場合は、乗務を見合わせるなど安全を優先した対応が必要です。
また、日常的な健康管理も重要です。睡眠時無呼吸症候群(SAS)のスクリーニング検査や健康診断の結果を活用し、必要に応じて生活習慣の改善を促しましょう。
なお、日々の点呼業務を徹底しながら運行管理者の負担を減らす方法として、遠隔地からでも的確に確認できる「IT点呼」の導入も有効です。IT点呼の仕組みや詳しい導入要件については、以下の記事を参考にしてください。
「IT点呼とは?他の点呼との違いや導入メリット・要件を徹底解説」
労働時間や拘束時間を可視化して過重労働を未然に防ぐ
睡眠不足を根本から防ぐためには、トラック運転手ごとの勤務状況を正確に把握する仕組みが必要です。労働時間や拘束時間を可視化できれば、長時間労働が続いているトラック運転手を早期に把握できます。
基準値を超過しそうな運行を事前に察知できれば、シフトや運行ダイヤの見直しもスムーズに進められるでしょう。
しかし、勤務形態が複雑な運送業において、紙やExcelだけで全員の状況を管理するのは容易ではありません。そこで、デジタルタコグラフなどのデータと連携できる勤怠管理システムを導入し、労務管理を効率化する方法がおすすめです。
トラック運転手の労働時間を適正管理するなら「トラック勤怠システム」
トラック運転手の睡眠不足を防ぐためには、十分な休息を確保できる勤務体制が欠かせません。そのためには、労働時間や拘束時間、休息期間を正確に把握する必要があります。
そこで有効なのが、運送業向けの「トラック勤怠システム」です。改善基準告示に対応した勤怠管理・支給シミュレーションシステムで、主な特長は以下のとおりです。
・改善基準告示に対応した勤怠管理
・デジタコや点呼システムからの勤怠データ取り込み
・基準値超過時のメール通知
・歩合計算の自動化と支給シミュレーション
・クラウド型による拠点間の情報共有
デジタコデータを取り込めば、トラック運転手ごとの勤務状況をひと目で確認できます。拘束時間が長引きそうな人員を早期に察知できるだけでなく、運行計画やシフトの調整にも活用可能です。
手作業による集計作業から脱却し、確認業務を効率化したい運送会社に適しています。トラック運転手の健康を守り、適正な労務管理を実現するためにも、ぜひ「トラック勤怠システム」の導入をご検討ください。
まとめ
トラック運転手の睡眠不足は、長時間拘束や不規則な勤務体制、車中泊といった過酷な労働環境によって引き起こされます。
睡眠不足が続けば、居眠り運転による重大事故だけでなく、健康障害や離職にもつながります。運送会社にとっても、安全運行や法令遵守に関わる重要な課題です。
睡眠不足を防ぐためには、余裕のある運行計画で休息期間を確保し、休憩・仮眠できる環境を整えることが大切です。あわせて、乗務前点呼で睡眠不足や疲労状態を確認し、労働時間や拘束時間を正確に把握する仕組みも整えましょう。
「トラック勤怠システム」を活用すれば、デジタコデータを取り込み、トラック運転手ごとの勤務状況を効率的に管理できます。トラック運転手の健康と安全を守り、適切な労務管理を実現するためにも、勤怠管理のシステム化を検討してみてください。