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コラム

運行管理における点呼とは?実施のタイミング・確認事項・ルールを徹底解説

運行管理における点呼とは?実施のタイミング・確認事項・ルールを徹底解説

更新日 : 2025.06.30
点呼

運行管理者の中には、「点呼をどう実施すべきかわからない」と悩む人も多いでしょう。近年は事故増加を受けて点呼に関する規制が強化されており、正しい知識と対応の重要性が高まっています。

この記事では、点呼とは何か、概要や実施方法、具体的な確認事項について解説します。さらに、IT点呼・遠隔点呼・自動点呼の違いや導入条件についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。

運行管理における点呼とは

運行管理における点呼とは、運行管理者がドライバーに対して行う安全運行のための報告・確認・指示・記録の業務のことをいいます。点呼は「貨物自動車運送事業輸送安全規則 」で義務付けられています。

ここでは、運行管理における点呼の目的や、点呼がどのような法的義務を伴うものなのかについて見ていきましょう。

点呼の目的

運行管理における点呼の目的は、運行の安全を確保し、事故や違反を未然に防ぐことです。国土交通省が発行している「点呼は安全運転の要」によれば、点呼の目的として以下の5点が挙げられています。

1. 悪質違反(アルコール摂取・危険ドラッグ等)の防止
2. 健康起因事故の防止
3. 車両故障事故の防止
4. 同種事故の防止(ヒヤリ・ハット活用)
5. 運転者とのコミュニケーション確保

点呼は、形式的にこなすだけでは本来の目的を果たせません。チェック項目を一通り終えるだけでなく、「その内容にどのような意味があるのか」「なぜ確認する必要があるのか」を把握したうえで実施することが重要です。

点呼の法的義務

運行管理者は「貨物自動車運送事業輸送安全規則」により、乗務前後の点呼が義務付けられています。点呼の内容は点呼記録簿に記録したうえで適切に保管し、必要に応じて監査で提示できる状態にしておかなければなりません。

近年では、飲酒運転に対する社会的な非難の高まりを背景に、関連規則の見直しも進んでいます。実際に令和6年10月1日には、飲酒運転に対する処分が大幅に強化される改正が行われました。

2025年3月には、日本郵政の委託先において点呼の不備が報道されました。問題とされたのは、アルコールチェックを実施していなかったことや点呼記録に虚偽の記載があったことです。

このように大企業であっても、管理が不十分であれば点呼違反が発覚することがあり、事業用車両の使用停止や営業許可の取消しといった厳しい行政処分が下される可能性があります。社会的な信用を大きく損なうことになり、取引先との契約解除や顧客離れといった事態にもつながりかねません。そのため、点呼は事業継続のためにも確実に実施することが不可欠です。

点呼の実施タイミングと確認事項

点呼の運用は義務であるにもかかわらず、現場での対応にはばらつきが見られるのが実情です。ここでは、点呼の具体的な実施タイミングと確認すべき項目について解説します。

乗務前点呼

乗務前点呼は、運行を開始する前に運転者や車両の安全を確認するために行います。運行開始の5~10分前に行うことが望ましいとされています。これは、点呼から運行開始までの時間が空きすぎると、その間に運転者の健康状態が変化する可能性があるためです。

乗務前点呼で確認する内容
・運転者の健康状態(疾病・疲労・睡眠不足・薬の服用)
・酒気帯びの有無
・日常点検の実施状況
・免許証の所持・有効性
・車両の登録番号や識別番号
・携行品の確認(運行指示書、消火器、非常信号用品、停止表示板等)

これらを運行開始前に確認することで、ドライバーの体調不良やアルコール摂取の状態を把握し、事故を未然に防げます。

乗務後点呼

乗務後点呼は、運行を終えた後にドライバーの疲労や運行中の異常を確認するために行います。帰庫後5分以内に行うことが理想とされています。

乗務後点呼で確認する内容
・運転者の健康状態(疾病・疲労・睡眠不足・薬の服用など)
・酒気帯びの有無
・運行した自動車・道路・運行の状況(事故・異常の有無)
・交替運転者への通告事項(交替があった場合)
・携行品の回収や積荷状況、苦情の有無など

乗務後点呼は、次回の運行の安全性を確保する重要な役割を果たします。そのため、整備や洗車作業よりも優先して行うことが重要です。

中間点呼

中間点呼では、運行の途中で運転者の状態を把握するために実施し、安全運行の継続が可能かを確認します。2泊3日以上の長距離運行などで、直接対面で乗務前・乗務後点呼を行うことが物理的に困難な場合に実施される点呼です。

中間点呼で確認する内容
・運転者の健康状態(疾病・疲労・睡眠不足・薬の服用など)
・酒気帯びの有無
・運行した自動車・道路・運行の状況(事故・異常の有無)

中間点呼は、電話点呼やIT点呼、遠隔点呼などの非対面方式で実施することが認められています。ただし、使用する機器や実施方法については国土交通省の定める基準を満たす必要があります。詳しくは次の章で解説します。

点呼の種類と実施のやり方

点呼には、対面点呼・電話点呼・IT点呼・遠隔点呼・自動点呼の5種類があります。
ここでは、それぞれ適した状況や導入条件について解説します。

対面点呼

対面点呼は、運行管理者がドライバーと顔を合わせて実施する従来型の点呼スタイルです。対面で健康状態やアルコール摂取の有無などを確認できるため、状況を正確に把握できます。

通常、すべての点呼は直接の対話で実施することが求められています。ただし、特別な事情がある場合には、別の点呼方法が許可されることもありますが、その場合でも安全性の確認は対面での点呼と同じ水準で実施する必要があります。

電話点呼

電話点呼は、営業所や車庫から離れた場所にいる運転者に対して、やむを得ない状況下で実施が認められる点呼方法です。主に中間点呼として用いられ、対面点呼と同じ水準での確認が求められます。

電話点呼は、携帯電話や業務用無線で実施できるため、特別な設備の導入が不要です。ただし、近年ではIT点呼の活用も進んでおり、電話点呼はあくまで例外的手段とされています。

IT点呼

IT点呼は、専用のカメラやモニターなどのIT機器を活用し、遠隔地の運転者とリアルタイムで点呼を行う方法です。運行管理者が離れた場所にいても運転者の表情や動作を視覚的に確認できるため、電話点呼に比べて高い安全性を確保できます。

IT点呼を実施するには、基本的に国土交通省からGマーク認定(優良営業所の証)を受ける必要があります。

Gマークの取得要件
・申請資格を得ていること
・法令遵守や安全への取り組みの評価基準をクリアしていること
・法に基づいた認可申請・届出・報告事項を行っていること
・社会保険等へ適正に加入していること

しかし、以下の条件を満たせばGマーク認定を受けていなくても営業所と車庫間でのIT点呼の実施が可能となりました。

・開設後3年を経過していること
・過去3年間、自らの責に帰する重大事故を発生させていないこと
・過去3年間、行政処分や警告を受けていないこと

遠隔点呼

遠隔点呼は、点呼の効率化を目的として、2022年の制度改正により導入されました 。Gマーク認定を受けなくても一定要件を満たせば利用できるため、IT点呼に比べて導入しやすい点が特徴です。

遠隔点呼の導入要件
1. 使用機器・システムの品質(映像・音声・通信環境)
2. 点呼場所の照度(運転者の顔や全身が明瞭に確認できること)
3. 国交省が定める運用ルールの遵守

遠隔点呼とIT点呼は、どちらもIT機器を活用するという共通点がありますが、いくつかの点で異なる特徴があります。
以下は遠隔点呼とIT点呼の主な違いです。

<遠隔点呼とIT点呼の違い>

遠隔点呼とIT点呼の違い

IT点呼は厳格な条件下で行われる安全重視の点呼方法である一方、遠隔点呼は柔軟で導入しやすい点呼方法であると覚えておくと良いでしょう。

業務後自動点呼

業務後自動点呼は、2023年1月から新しく導入された点呼方法です。「業務後自動点呼実施要領」に基づき、AIやICT技術を活用して、運行管理者が不在の状況でもドライバーが自動システムを通じて点呼を受けられる画期的な仕組みとなっています。

自動点呼を導入するためには、以下の要件を満たす必要があります。
・国土交通省が認める機器の導入
・点呼に適した環境の整備
・運用管理体制の遵守
・国土交通省への申請と認定

自動点呼は業務後のみ利用が可能でしたが、2025年4月1日より業務前自動点呼も可能 となりました。これにより、早朝や深夜など運行管理者の常駐が難しい時間帯でも、効率的かつ確実な点呼の実施が可能となっています。

この改正に伴い、自動点呼の実施方法も多様化しています。AIやロボット、ICT(情報通信技術)を活用し、顔認証やアルコール検知、健康状態の自動測定など、複数の機器やシステムが導入されています。

こうした制度の拡充は、人手不足への対応や運行管理の効率化を推進できる点で運送業界全体から注目を集めています。

運行管理者が守るべきルール

点呼に関しては、法律で定められたルールを守ることが求められており、その内容を正しく理解しておくことが欠かせません。
ここでは、運行管理者が点呼を実施する際に必ず押さえておくべきルールや注意点について解説します。

点呼は原則として運行管理者自身が実施する

点呼は、原則として選任された運行管理者が実施しなければなりません。しかし、以下の要件を満たせば、補助者が実施することが可能です。

・月間の点呼回数の3分の2未満
・国土交通省の講習を修了している

点呼はドライバーの安全を確保するための重要な業務のため、運行管理者が漏れなく記録し、正確な指示を出すことが求められます。点呼時の指示内容については、以下の記事で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
点呼記録簿の指示事項とは?手軽に記載する方法や実施のタイミングを紹介

点呼記録簿は1年間の保存が義務付けられている

点呼後の記録は、「貨物自動車運送事業輸送安全規則」の第7条により、原則1年間の保存が義務付けられています。

さらに、一般貸切旅客自動車運送事業者(貸切バス事業者など)に対しては、2024年4月1日以降に点呼記録簿の保存義務が強化されました。

・点呼時の様子を動画撮影し、90日間保存する
・アルコールチェックの様子を撮影し、90日間保存する
・2024年4月1日分以降の点呼記録簿は電子ファイルで3年間保管する

保存期間のルールを守らないと、監査での指摘や行政処分の対象になる可能性があります。罰則を受けないための保存方法については、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
点呼記録簿の保存期間はいつまで?罰則を受けないための保存方法をご紹介

点呼業務を正確かつ効率化できる「ロボット点呼・IT点呼」

点呼業務は、ドライバーの安全確保や事故、違反の未然防止の観点から、運送業界において欠かせない重要な業務です。しかし、近年では運行管理者の人手不足や、点呼記録の漏れ・ミスといった課題が深刻化しており、これまでの人手による対応には限界が出てきています。

こうした現場の課題を解決する手段としておすすめなのが「ロボット点呼・IT点呼」です。「ロボット点呼・IT点呼」の特徴として、以下が挙げられます。

・点呼業務の精度向上と効率化により、運行管理者の負担を軽減
・指示漏れや確認ミスを防ぎ、業務トラブルを未然に防止
・点呼記録簿はクラウド上に自動保存されるため、保管・検索も容易

単に業務を効率化するだけでなく、法令遵守の徹底や安全意識の向上といった側面からも重要なツールとなっています。デモンストレーションや料金については、以下よりぜひお気軽にお問い合わせください。


まとめ

点呼は、事故や違反を未然に防ぐための重要な業務です。運行前や運行後に確実に実施することが法令で義務付けられており、適切に実施できていなければ社会的信用の失墜や業務に重大な影響を及ぼしかねません。

点呼業務の効率化や人為的ミスの防止を目的として、ぜひ「ロボット点呼」や「IT点呼」の導入を検討してみてください。対面と同等の安全確認を非対面で行えるため、負担を抑えつつ、業務の正確性も向上します。導入後もスムーズな運用支援のサポート体制をご用意しておりますので、まずはお気軽にご相談ください。